浜遊び という
貝殻のピアスです。
本当は “死が2人を分つまで” という名前にしたかったのだけど
値段もついているし、「死が2人を分つまで」が購入されました、と通知が来るのも
ちょっとやだなと思ってやめました。
この言葉を知ったとき、実家の近所に住むおばちゃんのことを思い出した。
後藤さんという。
小さい時から知っている後藤のおばちゃん。
知っている、といっても素性はよく知らない。
いつも犬を連れて散歩をしていて、道で会って、
こんにちはと声をかけると
「あら〜 ゆりちゃん あんまり綺麗でわかんなかったわよ〜〜」
と言ってくれたり
子どもを3人産んだ姉と私を比べて
「ゆりちゃんはまだかよっっ!」(私をびんたするジェスチャーつきで)と
言ってくれたりする人だった。
私が声をかけると喜んでくれる後藤のおばちゃん。
偶然会えた時は、いつも私を優しい気持ちにさせてくれた。
最近引っ越してしまったらしい。
私の実家は下町で、オリンピックに向けて家を売って出て行ってしまう人がここ何年かでとても増えた。
かわりに民泊とやらがあちこちにできている。
後藤さんの家もそうなのかもしれない。
引っ越しの理由はわからないけど、
瞬間的にもう二度と会えないんだなと思った。
この先おばちゃんが亡くなっても、私が亡くなっても
きっとお互いそのことを知らずに生きていくのだろう。
それがとても寂しかった。
私たちは1つと 1つ。
違う個体で ただ近くに住んでいただけ。
時折会えば挨拶をしていただけ。
広い砂浜では
ひとつの貝と ひとつの貝と ひとつの貝が
無造作に生き抜いている。
1つ1つは皆美しく 1つの形で完結している。
1つは1つの喜びや悲しみも知らず
知るすべもなく
各々の人生を生き抜いて行く。
そんなことを考えながら作った
少しセンチメンタルな作品です。